
こんにちは!mitsumaru300です!!
今回は「環境にやさしい除草剤」について調べてみました。なぜこんなことを調べるかというと、加計呂麻島は住民の高齢化や減少等により集落作業の主である草刈が大変だからです。

移住者にしても、島人にしても「除草剤は悪」「除草剤は環境を破壊する」という考えが前提としてあります。
ふと、これほど科学技術が進んだ世の中で本当にそうなのかと疑問に思ったのことと、集落作業の負担を軽減する方法がないかを探したいと思い調べることとしました。
今回は除草剤パート①として「最近の除草剤に関するまとめと健康被害」について書いていきます。
除草剤タイプ

除草剤は大きくわけて2種類あります。

それは、「茎葉処理型」と「土壌処理型」です。
・すでに生えている雑草を枯らしたい
・散布された薬剤が葉の表面から吸収されて茎を通り根まで移動して雑草が枯れる
・根や樹の木質化した幹からは吸収されず、 かかった植物だけ枯らすので、葉にかからないよう注意すれば果樹の下草除草にも使われる
・土に残留しないので農地にも使用できる
・芝生に使用する場合は専用の除草剤が必要
・これから生えてくる雑草を防ぎたい
・薬剤が土の表面に残る
・水田で水稲用除草剤としてよく使用されている
・農地には不向き、砂利の駐車場等に適している

集落作業での草刈は主にバスが通るメイン通り沿い(左右各幅2m、距離300m)となります。農地ではありませんが、環境保全のことを考えると「茎葉処理型」の選択となると思います。
茎葉処理型が土に残留しない仕組み
茎葉処理型はグリホサートを原料としたアミノ酸系除草剤で、人やペット、環境にやさしいと謳われています。まず特徴としては、非選択性でどの雑草にも効果があります。

芝生などでは芝生専用の除草剤でないと芝生自体も枯らしてしまうので注意が必要です。

このアミノ酸系除草剤はどのような仕組みで人やペット、環境にやさしいと言われているのでしょうか。
グリホサートは「グリシン」と「リン酸」の誘導体です。

グリシンとは、20種類のアミノ酸のうち、体の中でつくられるアミノ酸の1つで、広く食品にも含まれ、ホタテやエビなどの魚介類にも比較的多く含まれます。

リン酸はリンのオキソ酸の一種。リンは骨や歯、筋肉や細胞膜などの構成成分です。

誘導体とは、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のことをいいます。

ざっというと、「グリホサートはグリシンとリン酸という人間の体内にある成分の親戚のようなもの」と捉えてよそうです。
元祖グリホサートであるアメリカ生まれの「ラウンドアップ」という商品紹介を参考にしてみると、
グリホサートは地面に落ちると土壌に吸着され不活性化します。土に吸着されたグリサホートは土壌中で2週間ほどで微生物により、水、アミノ酸、炭酸ガス、リン酸塩、天然生成物に分解されやがて消失します。グリホサートは自然界に存在するものだけに分解されるので、人やペット、環境にやさしいと言われる理由となります。ただし、草が枯れるまでに1週間から1か月の時間がかかります。
グリホサートはどういう仕組みで草を枯らすのか
グリホサートは、葉っぱにかけただけで、成分が茎を通り、根まで運ばれて、植物全体を枯らす特徴を持ちます。植物に存在する(動物には存在しない)酵素の働きを阻害する仕組みで動物への毒性がきわめて低くなっています。とても簡単にまとめると、

「グリホサートは植物内に入ると、植物が成長するために必要なアミノ酸を形成できないようにすることで、植物は成長できずに枯れていく」という仕組みです。
詳しくは専門用語だらけですが下記の通りです。
植物体内で,「薬剤が結合したりその働きを受けることで機能異常を起こし,最終
的に殺草作用につながる端緒となる分子や反応」を作用点(site of action)いい,その結果生じる
「植物の生育に必要な物質の不足や有毒な物質の生成によって,最終的の殺草効果が表れるプロ
セス」を作用機構(mode of action, mechanism of action)という.環状アミノ酸の生合成阻害:作用点は,シキミ酸経路のある段階に働く EPSP 合成酵素の阻害であり,その結果フェニルアラニン,チロシン,トリプトファンといった環状アミノ酸が形成されないために植物の形態形成,生合成・代謝に不可欠なタンパク質がつくられず,生長点での成長が停止して枯死に至る.これに該当する除草剤はグリホサートである.
草と緑(Weeds and Vegetation Management)9 : 2‐12(2017)伊藤操子
(特定非営利活動法人緑地雑草科学研究所/マイクロフォレストリサーチ株式会社)

茎葉処理剤であるグリホサートは、人・ペット・環境にやさしいアミノ酸を成分とし、このアミノ酸が植物内に浸透することで、植物の成長に必須のアミノ酸形成を阻害して、植物を枯れさせることがわかりました。
実際にグリホサートを散布する際に注意すること

まず散布時の服装は、農薬用マスク、手袋、長ズボン、長袖の作業着などを着用。

さらに密着性の高い眼鏡や帽子なども利用してなるべく皮膚を露出する部分を少なくすることが大切です。
作業後は手足、顔などを石けんでよく洗い、うがいをする。

そして釣りをするmitsumaruには魚毒性についても興味が向きます。
グリホサートは土に付着することで不活性化しますが、川や海などへ直接飛散してしまうと水産動植物(魚類)に影響を及ぼすので、河川、養殖池等に飛散、流入しないよう注意が必要です。米環境保護局は、空中散布は上空3メートル以内から行い、また風速6メートルを超える場合は差し控えることを新提言しています。

グリホサートは薬液が葉全面に付着しなくても、葉全体→茎→根など離れた組織へ移動する性質があります。
なので、なるべく葉の全面にかけたほうが枯れると思って薬液を希釈しすぎると逆に効果がなくなってしまいます。

目安としては≦50ml/㎡でよいそうです。

逆に、効き目を強くしようと高濃度で散布すると、薬剤の移動で重要な茎が壊死してしまい、根などの地下部への移動が妨げられてしまいます。

また、散布直後に刈り取りをして茎を損傷させるのも薬液が地下部へ移動をすることを妨げる結果となります。
実験では、散布後1週間後に刈り取りをしても、1か月後には雑草は元の状態にまで成長しています。

グリホサート散布後に雑草が枯れるまでは1週間から1か月かかることと、この実験結果を考慮すると、散布後の刈り取りは散布して1か月後ぐらいに行えば、しっかりと薬液が植物全体に浸透し、根まで枯れた状態で刈り取りができると思われます。
いままで「悪」だと思っていた除草剤ですが、用途に適した薬剤を選択し、正しい方法で使用すればこのような素晴らしい結果を出してくれるものがあることを知れたことは今回の学びでした。

除草剤を上手く選択すれば集落作業の負担が軽減する!!と意気揚々だったのですが、、、その一方で、除草剤抵抗性変異という問題が世界で取り沙汰されているという情報をみつけました。
除草剤抵抗性変異について

簡単に言うと、同じ除草剤を何度も繰り返し散布してもわずかに生き残った抵抗性のある少数の植物がどんどん増えていき、同じ除草剤が効かなくなるということです。
この問題は世界的な悩みとなっているようです。
この対策として私が考えたのは、

一年を通して除草剤を使用するのではなく、雨がやや少なく草が伸びやすい夏の時期に限定して使用し、薬液散布1か月後に枯れずに残った植物を根ごと抜き取り処分すること。
このような方法であれば、除草剤抵抗変異の問題を最小限に抑えて、除草剤+刈り取りの効果を最大限にひきだせるのではないでしょうか。この工夫を実践することで、毎月行う草刈作業の範囲が狭まれば住民の作業負担も軽減されるのではないかと思います。
ここで除草剤の仕組みや実際に使用するときの注意点をおさらいしておきます。
・茎葉処理剤であるグリホサートは、人・ペット・環境にやさしいアミノ酸を成分とし、このアミノ酸が植物内に浸透することで、植物の成長に必須のアミノ酸形成を阻害して、植物の成長をとめることで枯れさせる。
・土壌に落ちた茎葉処理剤は不活性化し、2週間ほどで自然界の成分に分解される。
・50ml/㎡以下の濃度のグリホサートを散布して1か月後ぐらいに刈り取りをすると、根まで枯れた状態で刈り取りができる。
・散布時の服装は、農薬用マスク、手袋、長ズボン、長袖の作業着・フード付きなどを着用し、肌が露出しないようにする。
・除草剤抵抗性変異を考慮すると、一年を通して除草剤を使用するのではなく、雨がやや少なく草が伸びやすい夏の時期に限定して使用し、薬液散布1か月後に枯れずに残った植物を根ごと抜き取り処分する(私的意見)

やれやれ、これで一件落着だと思った矢先、、、さらに驚かされる問題が世界で論争を引き起こしている情報をキャッチしました。それは、グリホサートの健康被害についてです。
グリホサートの健康被害
日本では特に大きな問題とはなっていないようですが、グリホサートの発がん性について世界的に議論が白熱しているようです。発がん性に肯定的、否定的な立場をざっとまとると以下の通り。
さらなる詳細記事は以下の通り。
国際癌研究機関(IARC)は、癌研究を専門とする世界保健機関(WHO)の機関です。2015年3月20日、グリホサートに関するIARCワーキンググループは、グリホサートとがんの関連性に関する1年間の調査結果を発表しました。IARCワーキンググループは11カ国から17名の著名な科学者で構成されていました。IARCワーキンググループは、この化学物質は「おそらくヒトに対して発がん性がある」と結論付け、グリホサート曝露と非ホジキンリンパ腫の間に関連があるという強力な証拠があると結論付けた。
「グリホサートは神経毒性のある化学構造をしている」と指摘したのが、黒田洋一郎(元東京都神経科学総合研究所研究者)。
【2019年5月1日 AFP】米環境保護局(EPA)は4月30日、除草剤に含まれる化学物質グリホサートについて、人間にがんを引き起こす可能性は低いという見解を示した。その一方で、チョウなど植物の花粉を運んで受粉を助ける動物「送粉者」をはじめ、生態系への潜在的リスクを回避するため、新規制の導入を提言した。
米カリフォルニア州で2018~2019年に行われた裁判では、グリホサートが使用者にがんを引き起こしたという判断が下され、グリホサートを開発した米農薬大手モンサント(Monsanto)に対しては、同成分を含む除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」の潜在的な危険性の警告を怠ったとして賠償金などの支払いが命じられた。
(CNN) 世界中で一般的に使われている除草剤の成分「グリホサート」にさらされると、がんのリスクが41%増大するという研究結果が、このほど学術誌に発表された。
グリホサートは米モンサントの「ラウンドアップ」などの除草剤に使われている化学薬品。ワシントン大学の研究チームは、これまでに発表された調査結果を検証した結果、グリホサートを主成分とする除草剤と、免疫系のがん、非ホジキンリンパ腫のリスク増大との因果関係が認められたと発表した。
グリホサートの発がん性については学会で論議の的になっている。米環境保護庁や欧州食品安全当局はグリホサートの発がん性に否定的な見解をまとめ、モンサントを2018年に買収したバイエルも、グリホサートの安全性と除草効果を強調している。
一方、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、「人に対して恐らく発がん性がある」グループにグリホサートを分類した。
この除草剤が原因で非ホジキンリンパ腫を発症したという訴えも相次ぎ、2017年までに800人以上がモンサントを提訴。翌年には原告の数が数千人に膨れ上がり、モンサントに対して賠償金の支払いを命じる判決も出ている。
ワシントン大学の研究チームは、グリホサートと非ホジキンリンパ腫の因果関係について発表されたこれまでの研究結果を検証。除草剤散布を専門とする5万4000人あまりを対象に2018年に実施した実態調査結果も併せ、因果関係があると結論付けた。
この研究結果についてバイエルは、「統計操作」や「重大な手法的欠陥」があったと反論。「グリホサートを使った除草剤の発がん性を否定する見解を覆すような科学的根拠が示されていない」としている。

と、このような議論が世界中で行われているようです。様々な国で以下のようにグリホサートの使用禁止や制限する流れになりつつあります。
オーストリア:2019年6月、年内にグリホサートの禁止を計画中
ベルギー: グリホサートの個人使用禁止
ポルトガル:すべての公共スペースでのグリホサート使用禁止
フランス:2019年ラウンドアップ360の販売、流通、使用を禁止
デンマーク:2018年7月、食品への残留物を避けるために、すべての発芽後作物へのグリホサートの使用を禁止

このような世界の流れの中で、日本は特に何も動きはないようです。100円ショップでもお手軽にグリホサートを売っているような状況です。
まとめ
この記事を書き始めた目的は、集落作業の草刈の負担軽減でした。茎葉処理型の除草剤が救世主となるかと思った矢先に、世界でグリホサートの発がん性について議論されていることを知りました。グリホサートの除草能力は目を見張るものがありますが、発がん性リスクの可能性があるとすると違う手段を考えなければなりませんね。現状では発がん性についてはグレーゾーンですが、たしかに土に吸着せず飛散したグリホサート(散布時の衣類を洗濯するときも含む)が川から海へ流れでて、魚介類の中にたまり、それを人間が食すという悪循環がないとは言えないですよね。加計呂麻島の自然を守りたい視点からは、この便利なグリホサートを安易に使用するのは控えたほうが良いのではないかと思っています。
では除草剤の他に代替え手段はあるのでしょうか?調べてみると、、、
「天然重曹の水溶液を高圧で雑草に直接噴射し枯草を行う工法」や「蒸気技術を使用した除草方法」
というものがあるようです。次回、除草パート②として上記2つに焦点をあててまとめていきたいと思います。自然を守りつつ、集落作業の軽減を目指すにはまだまだ勉強が必要そうです。

ということで本日はここまで。
加計呂麻島のきのこ・しいたけ作り【kakeroma nature】
最後まで読んでいただきありがとうございました!

mitumaru300でした!!